· 

358 和太鼓奏者になるまで(その5)避難生活の始まり

和太鼓奏者 坂牧颯人(第5話)

 
六日町での生活は快適でした。
実家の家族も含めると14人での生活。
前から泊まりで遊びにいったりしていたのでそんな感覚でした。
テレビでは山古志の状況や避難所での生活が報道されていて、
大人達が深刻そうな顔をして見ていたのを覚えています。
兄たちがどうかはわかりませんが、僕はそんなことは気にせず、
秋休みだと思って満喫していました。

遊んでいたゲームやおもちゃは全部山古志の家の中。
だからと言って退屈していたかというとそんな事はなかったです。
叔父に遊んでもらったり、両親と遊んだり、兄や弟と遊んだり。
大人はみんな優しかったですし、なんでもしてくれた様な気がします。
あっという間に時間は過ぎました。

これは後日談みたいなものですが、
最初、避難生活は一週間くらいだと聞いていました。
父にも聞いてみたんですが、親たちの気休めの一言ではなく、
本当にそんな話があったそうです。
それがもう一週間、いや一ヶ月とみるみるうちに期限が伸びていき、
そして"いつ帰れるか、本当に帰れるかわからない"となったようです。

そんなことは知りもしない坂牧少年。

避難してから一週間くらいたった頃、両親から転校の話をされました。
一ヶ月しか行かないのに学校行くの?と思ったのを覚えています。
まあ暇だし良いよ!と軽い感じで僕たちは大巻小学校に転校しました。

和太鼓奏者 坂牧颯人(第5話)