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345 中越から能登へ ⑥ -被災地の「創造的復興」か「創造的復旧」か-

公益社団法人中越防災安全推進機構 理事長 中林一樹(第18話)

 (新潟県中越大震災20年プロジェクト 実行委員長)

 
中越地震では、阪神・淡路大震災における「創造的復興」ではなく、
「創造的復旧」を目指した。

大規模災害復興法(2013)もなかった阪神・淡路大震災では、
公共事業は「原形復旧」への補助が原則で、その方が経費が過大であったり
再度被災防止が不可避である場合にのみ「改良復旧」が補助された。

そのような状況で、大都市のように右肩上がりの新たな改造を目指すのではなく、
人口減少下において地域の文化や社会、伝統を震災前の状況に戻すことにも、
“空前の取組み”が不可欠であるとして、
中越地震では「創造的復旧」を理念に掲げて、復興に取り組んだ。

被災者を置き去りにして被災地を新たな地域に創造する「創造的復興」ではなく、
被災者に寄り添って伝統と文化と社会がある被災地を改良的に復元するには
「創造的復旧」の発想と取り組みが不可欠である、との理念が、
中越地震からの中越地域の復興の目指すべき方向と方法を決めた。

中越も、能登も、里山里村はどんな時代でも里山であり里村であろう。
だからこそ魅力のある、文化と伝統溢れる、唯一無二の地域であり、
全ての人ではなく、ここでなければならない人を引き付ける地域としてあり続けるのではないか。
それが、「創造的復旧」としての地域づくりなのではないだろうか。

公益社団法人中越防災安全推進機構 理事長 中林一樹(第18話)

 (新潟県中越大震災20年プロジェクト 実行委員長)