· 

336 和太鼓奏者になるまで(その4)避難するまで

和太鼓奏者 坂牧颯人(第4話)

 
明るくなってから周りをよく見ると正面の山は崩れて、
もう少しで紅葉していたはずなのに全部茶色。
ばあちゃんがやっていた家の裏の畑は崩れ落ちて崖の下。
傾いてボロボロの家。

幼馴染と遊んだり、焼肉のリベンジか、
近所に住む叔母ちゃんの家の庭でBBQしたり、
子供ながらに非日常の中で起こるイベントを
楽しんでいたんじゃないでしょうか。

そうこうしているうちにヘリコプターでの全村避難の話。
詳しい話は僕は全くわかりませんが、
全村避難はペットの連れ出しができませんでした。
そうなるとルクをおいていかなければならない。
兄弟全員猛反対。
車の中でも吠えずにずっと一緒に過ごしていました。
家族をおいてはいけません。
当時は友達と離れるとか転校するとか何にも考えてなかったです。

僕たち家族は母の実家、南魚沼市六日町の方に車で避難しました。

ジェットコースターとか今でも乗ったことないですが、
例えるならば、安全を度外視した絶叫マシーンのコースみたいな道。
運転する父は気が気じゃなかったでしょうね。

山古志から離れるにつれてキレイになっていく道。
もちろん六日町でも被害はあったと思いますが、
六日町の家に着いた時、
なんというか日常に帰ってきた安心感に包まれました。

和太鼓奏者 坂牧颯人(第4話)