329 被災者のパワーを引き出す復旧・復興!-市長としての心がけ(11) -天空の里-

前長岡市長/(一社)地方行政リーダーシップ研究会代表理事 森民夫(第11話)

 
集落の全壊率100%、河川の河道閉塞による浸水被害も発生した
山古志地域の楢の木集落の集団移転先は、
標高300mの高台(旧池谷小学校跡地)に決まった。
実際、移転先の高台から旧楢の木集落を見下ろすと足がすくむ。
天空の里といわれる由縁である。

この集団移転が実現するまでの2年半、
住民主体による懇談会は、実に24回開催された。
市長であった私は、何故そんなに時間がかかるのか理解できなかった。

山古志支所の担当者に少々イライラして問いかけたところ、
「実は、ほとんどの皆さんは、天空の里に移転するか
長岡市内など別の地域に移住するか、とっくに決めているんです。
でも、移転する人は残る人に、残る人は移転する人に悪いと思って
本音を言わないんです。また、倅夫婦の家に移住するしかないとわかってはいても
嫁と姑の問題等で決断できないでいる人もいるんです。」と、言われた。

なるほど、何でも行政が決めることは間違っている。
行政は口出しせずに被災者が腹を決めるまで見守るしかないのだと
今更ながら思い知らされた。
同時に、私は長岡市長は務まっても山古志村長は務まらないなと思った。

前長岡市長/(一社)地方行政リーダーシップ研究会代表理事 森民夫(第11話)