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314 中越から能登へ ⑤ -被災者・被災地に寄り添った「中越大震災復興基金」-

公益社団法人中越防災安全推進機構 理事長 中林一樹(第17話)

 (新潟県中越大震災20年プロジェクト 実行委員長)

 

阪神・淡路大震災をモデルに新潟県中越地震では、
新潟県は3000億円を市中銀行から調達して年利2%で10年間運用し、
国の交付税措置として10年後に賄うこととして、
年間60億円で10年間600億円の復興基金を、財団法人「中越大震災復興基金」で運用した。

財団法人(県知事を理事長に、学識経験者、民間団体、地元の市長等の理事会)が、
民のための「公」として、官の「公」である行政から独立して、
被災者の復興意向に寄り添う被災地復興の支援を展開した。
この取り組みが、中越地震からの被災地復興の最も中核となっている、
被災者主体の復興の仕組みであった。

最も特徴的な取り組みである「手づくり田直し支援」と、
最も活用された「地域コミュニティ等施設再建支援」の事業がある。

前者が、大規模な土木工事ではなく棚田の手直しで時機を失することなく、
被災農家が小規模な重機を使って復旧工事の担い手として取り組む事業であった。
基金で重機をリースし、被災農家には復興工事の手間賃を支払った。
後者では、集落の鎮守、神社、祠、お堂などの修理や建て替えも、
地域コミュニティ施設の修理事業として基金で補助する取り組みであった。

利子の付かない時代で、東日本大震災では、直接復復興交付金として2000億円を交付したが、
財団による運営ではなく行政の直営方式となり、基金の運営が不透明化したとも言われる。
官ではできない“被災者に寄り添って時機を失することなく進める復興まちづくり”には、
このような『能登復興基金』を工夫して、きめ細かく、
被災者に寄り添った復興支援の工夫が極めて重要になっている。

公益社団法人中越防災安全推進機構 理事長 中林一樹(第17話)

 (新潟県中越大震災20年プロジェクト 実行委員長)