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284 中越地震、その時何が(その6)

株式会社夢プロジェクト 坂上明和(第7話)(元株式会社TeNYサービス 取締役)

 

中越地震の際も多くの家屋が倒壊したが、
阪神淡路大震災も同様に多くの家屋が倒壊した。
約7000人に及ぶ犠牲者の死因の8割が倒壊した家屋の下敷きによる圧死である。

神戸市内のとある住宅街を取材した際のことだ。
一見普通の住宅街なのだが、その風景に違和感を覚える。
目を凝らしてみると、その違和感の訳を知る。
通りに面した家屋の殆ど全ての1階部分が潰れ、
2階部分だけが建って並んでいるのだ。
「何だ、これは…」。異様な光景に戸惑いを覚えた。
犠牲者の多くは、1階部分に寝ていた人たちだった。

全国から集まった記者仲間と「1階で寝てはいけないな。2階で寝なければ」と
話し合ったことを今でも鮮明に覚えている。

専門家ではないので詳しいことは分からないが、
直下型の大きな地震で突き上げられ、下に落ちる瞬間、
その重みに耐えられず1階部分が潰されたと言われている。
巨大なビルの真ん中の階が潰れたのも同様の事象と解説があった。
部屋のテレビが何メートルも飛んだということを聞くと、
如何に凄まじい縦揺れが襲ったのかということが分かる。

防災対策の1丁目一番地が地震対策であることは言うまでもない。
台風や水害はある程度予測が出来るが、
地震の予測はできないと専門家も匙を投げている状況である。
発生することは確実なのだが、いつ、どこで発生するかは予測不可能な今、
私たちがやるべき災害対策とは何か。
今一度、基本に立ち返って検証する必要があるのではないだろうか。

完全な防災は有り得ない。不可能である。
能登半島の地震災害を見ると、改めて人間の力など及ばないことを痛感させられる。
必要最低限の防災対策を徹底するしかない。
災害現場に理想論は通用しない。

株式会社夢プロジェクト 坂上明和(第7話)(元株式会社TeNYサービス 取締役)