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269 7.13水害の体験談 子ども達を守る覚悟を決めた保育所の松井さん(1/6話)

株式会社エコロジーサイエンス 樋口勲(第7話)

 

ある子どものお父さんとおじいさんが迎えに来てくれて、さて帰ろうかというときでした。
ふと、玄関の扉に目線を移すと、ガラス越しに床から20cm程の高さまで
泥水が流れている様子が見えました。
「子供たちが危ない!」
そう思った私たちは1階でお昼寝をしていた子供たちを起こして2階に連れて上がりました。

2階にあがった子どもたちは眠いのと怖いのとが重なり、
ほとんどの子どもが泣いていました。そのときでした。
「パリン!」という音とともに窓ガラスが割れて保育所の中に泥水が入ってきました。
同時に電気が消えて、電話を含む全ての電気製品が使えなくなりました。

そのときは66人の子どもと9人の職員、
一緒に避難してくれたお父さんとおじいさんの2人がおりました。
「おばあさんに連れられて先に帰った子供は大丈夫だっただろうか・・・?」
とふと思いましたが、迫り来る泥水から子供たちを守ることで精一杯でした。

携帯電話を使って何度も役場に連絡を試みましたが、なかなか電話がつながらないのです。
それでもほかに助けを求める手段もなく、数十回目でしょうか、
ようやく役場に電話がつながりました。そ
して私は開口一番にこう聞いたのでした・・・。(つづく)

※新潟県中越大震災から20年ということは、7.13水害(新潟・福島豪雨)からも20年。
 7.13水害の体験談として、7.13水害から5年後の平成21年に地域の方々にヒアリングし、
 信濃川大河津資料館にて紹介したものを読みやすく調整しました。

株式会社エコロジーサイエンス 樋口勲(第7話)