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254 山古志村支援チームの活動 山古志村役場長岡支所開設へ(その5)

元新潟県県民生活・環境部 震災復興支援課長 丸山由明(第8話)

 

発災10日目の11月1日、
支援チームは長岡支所開設や避難所支援など3方面に分かれて本格的に活動開始。
私は役場機能移転に必要な重要書類等の搬出準備のため、
役場職員と共に山古志役場へ向かった。

朝、長岡高校グランドから自衛隊の大型ヘリで竹沢小学校グラウンドへ飛ぶ。
眼下に広がる被災直後の長岡市南部から山古志にかけての光景を
皆がそれぞれの思いで見入っていた。

小学校から役場までの道路は無数の地割れで大きく傷んでいたが、
軽トラならなんとか通れそう。
役場庁舎は全体が北側に多少傾き、
裏手の駐車場は大きく波打ってアスファルトがめくれあがっていた。
庁舎内は机や事務機器が散乱し、足の踏み場も無い。
書庫はスチール書架が倒れて段ボール箱が積み重なり、
ドアも開かない状態だった。

必要な書類の仕分けと搬出ルートを確保し、
お昼には役場前の駐車場で自衛隊の戦闘食を戴いた。
パックご飯とレトルトの八宝菜だったかな。
その日はまさに秋晴れ。
住民の居なくなった山古志は静寂と鳥の声に包まれていた。

空を見上げていると、地震のあったことなど忘れてしまうような不思議な感覚になった。
一服していると、一匹の黒犬が近寄ってきた。
避難から取り残されたのだろう。
保健所が用意したペットフードをやったが見向きもしない。
試しに「戦闘食」をやってみたら旨そうにたいらげて去っていった。
「たくましいぞ山古志犬、頑張れよ。」と見送った。

【執筆】
 元新潟県県民生活・環境部 震災復興支援課長 丸山由明(第8話)