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253 被災者のパワーを引き出す復旧・復興!-市長としての心がけ(9)-理髪店と畑-

前長岡市長/(一社)地方行政リーダーシップ研究会代表理事 森民夫(第9話)

 

コミュニティごとの入居により、被災者同士の助け合いが可能になるように配慮したとしても
仮設住宅での生活が長期化してくるとどうしても疲れが出てくる。
集会所でのお茶のみは大きな助けになっていた。
また、仮設住宅内で営業していた床屋さんは、被災者のたまり場として機能していた。

実は、仮設住宅内に床屋を併設することは、厚生労働省は許可しなかった。
あくまで住宅だから店舗の併設はまかりならないという見解であった。
しかし、長岡市としては熟考したうえで黙認することとした。
被災者が寄り合い元気になる場としての機能が大切だと考えたからであった。
厚生労働省から厳しい指導が来たときは戦う覚悟であったが、最後まで指導は来なかった。

また、山古志の皆さんから、「畑仕事をしたい。しないと体がなまってしまう。」
という要望をいただいた。
長岡ニュータウンにはまだ少し空き地があったので、
所長に相談したところ空き地を畑として快く提供していただいた。

畑としての整備が完了してオープンセレモニーを実施しようとしたら、
大勢の被災者の皆さんは、余計なセレモニーを横目で見ながら、
何とどんどん畑の方へ行ってしまった。
長島忠美元村長(長岡市復興管理官)が、私に申し訳なさそうな顔をしたが、
私は、畑の提供がそんなにも嬉しいことだったということを目の当たりにして、
むしろ嬉しかったことを覚えている。

【執筆】
 前長岡市長/(一社)地方行政リーダーシップ研究会代表理事 森民夫(第9話)