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242 中越地震、その時何が(その5続)

株式会社夢プロジェクト 坂上明和(第6話) (元株式会社TeNYサービス 取締役)

 

体育館に入ると、異様な臭気が漂う。

風呂に入っていない人々の体臭に交じって排泄物の匂いが充満しているのだ。
体育館のトイレを覗くと、汚物が便器やその周辺で山盛り状態となっていて
足の踏み場もなく、どうにもならない状態である。
断水でこうなってしまったのだが、排泄は時と場所を選ばない。
我慢はできないので、どんなに汚い場所であろうと
覚悟を決めて排泄行為に及ぶことになる。

神戸という大都会、人口密集地で発生したため、
避難した人の数も地方とは比べ物にならない。
体育館の裏や、校内の物陰という物陰は、全て排泄物で溢れている。
食べて、出して、寝る。人間の営みは、どんな災害が起ころうとも変わりようがない。
トイレの大切さというものを初めて知った災害取材となった。

中越地震では、トイレの問題は阪神淡路ほど大きくクローズアップされなかった。
仮設トイレの使用をためらい、水分補給を我慢して、
エコノミークラス症候群を引き起こす原因になったともいわれるが、
災害は地域の事情によって大きく左右されることが分かる。

都会はマンションが密集しているので大問題となるが、
新潟のように土地が広く、戸建て住宅が多い地域であれば、
水道が止まったとしても、いざとなれば庭に穴を掘ってトイレにすればよい。
山登りするときは基本的には物陰で野グソだ。
ちょっとした目隠しがあれば大丈夫。何とでもなる。
臨機応変に生き抜く術を身につけたい。

【執筆】
 株式会社夢プロジェクト 坂上明和(第6話)(元株式会社TeNYサービス 取締役)