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088 被災者のパワーを引き出す復旧・復興!-市長としての心がけ(5)  -コミュニティを尊重した仮設住宅-

森民夫(第5話):

山古志村民のための仮設住宅の位置を決定するに際して悩ましいことがあった。
全村民のための仮設住宅を1カ所にまとめて建設することを優先すれば、
それだけの広さの用地は長岡ニュータウンしかない。
すると山古志村からは遠くなる。
山古志村に近いところに建設することを優先すれば数カ所に分けなければならない。
マスコミを中心に様々な意見が寄せられた。

実は、私は大学の建築学部でコミュニティ計画を専攻していた。
恩師の鈴木成文先生は、当時、神戸芸工大学の学長で、FAXで、
「神戸の轍を踏まずコミュニティを尊重すべきだ。」というご意見とともに、
広場を中心に周囲を円形に囲う配置にした配置図までいただいた。
プレッシャーだった。

また、当時の長島村長も同意見であったので、
長岡ニュータウン1カ所に建設することとした。
広場を円形に囲むスペースの余裕はなかったので、
二棟の玄関を向かい合わせに配置するとともに集会所を数カ所建設した。

さらに、仮設住宅を所管する厚生労働省の反対を押し切り、
仮設住宅に床屋の開業を認めた。
結果的に長引く仮設暮らしを支えるとともに
集団移転等の話し合いが成功した要因となったと思う。

 

【執筆】
 前長岡市長/(一社)地方行政リーダーシップ研究会代表理事 森民夫(第5話)