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081 川口町災害対策本部日記(4)

県の連絡員や兵庫県からの応援職員に割り振られていた役場の会議室から起き出して、
人気の無い早朝の街の中を歩く。ひび割れてうねっている道路。
傾いている家、ひっくり返った灯籠、まっすぐなものは何もない。
これは現実の世界だろうか。まるで夢の中にいるような感覚になる。

午前、役場本部を小高地区の人々が訪ねてきた。
「あそこにはもうおれん。集団移転する。皆で決めた。」
悲痛な声が聞こえる。町長は無言で代表を見つめていた。

しばらくして派遣期間を終え、県庁に帰ることになった。
応急復旧を終えて通れるようになった国道17号を新潟方面へ向かう。
停電で真っ暗だった被災地から抜け出すと、街が光に満ちあふれていた。
これは現実なのだろうか。まるで別の世界に紛れ込んだよう。
再び、ふしぎな感覚におそわれた。

【執筆】
公益財団法人新潟県スポーツ協会 専務理事 細貝和司(第4話)
 (元新潟県防災企画課長)