11月2日の第1回委員会には、交通機関が混乱しきっているにも関わらず、
仙台や東京からも多くの研究者が駆けつけてくれました。
私を含め数名が被災地の調査をしていたので、
写真を見ながら起こりうる雪害について議論しました。
「雪害は百の顔を持つ」と先人が形容したほど多種多様です。
その多様な雪害を網羅して、冬に起こりうる災害のシナリオを作らなければなりません。
そこで5つのグループで手分けして作業することにしました。
しかし、冬までに残された期間はわずか。
シナリオを整理して冬に間に合う具体策を提案できたとしても、
それが住民や行政に届いて効果をあげるには少なくとも1ヶ月は必要でしょう。
12月に入ればいつ雪が降り出すかわかりません。時間との勝負です。
雪害への警鐘と提言を世に問うための報告会を11月14日と決めました。
作業できるのはわずか十日ほど。
インターネットを通じて情報が随時配信され、議論しては修正し、
それを繰り返すことで急ピッチで文書をまとめていきました。
報告会前夜、長岡技術科学大学を会場に、深夜まで取りまとめの作業を行い、
一字一句慎重に書き上げられた速報「中越地震後の雪氷災害軽減のために」は、
11月14日午後2時、広く一般に向けて発表されたのです。(つづく)
【執筆】
長岡技術科学大学 教授 上村靖司(第4話)
(新潟県中越大震災20年プロジェクト 副実行委員長)