新潟県中越大震災復興基金については、いずれ詳しいお話ががあると思いますが、
『記録・広報事業「震災の記憶」収集・保全支援』が基金メニューとして立ち上がりました。
新潟県立歴史博物館や長岡市文書資料室、小千谷市図書館などとこの事業を使って、
被災地連携企画展など実施しました。
これらの事業の積み重ねが、中越メモリアル回廊の下地を作ったとも言えます。
さて私が担当した最初の事業といってよいのが仮設住宅の保存でした。
もともと歴史的建造物の保存・活用を大学での研究テーマとしていましたが、
築2年の建造物保存に関わることになるとは思ってもいませんでした。
たぶん私の仲間内でもこれほど新しい建物の保存を行なった者はいなかったはずです。
中越地震の操車場跡の仮設住宅団地には、仮設集会所にケアセンターも
設置されていましたので、併せて仮設集会所も残すことになりました。
保存された仮設住宅は兵庫に一例あったものの、前例が少なく、
どのように残していくのか、残してどう活用するのか、検討することがたくさんありました。
平井先生からはメモリアル施設が完成するまで、
視察に来た人たちを受け入れるためにも必要になると考えをお聞きしていました。
実際仮設住宅の見学は、人が住んでいる状況を見学するわけにもいきませんし、
モデルハウスのように見学するために仮設を立てている場所もその時には
知る限りありませんでした。
実際に新潟県中越沖地震が発生した際には、被災者が、この保存した仮設住宅の見学に訪れ、
仮設住宅の住民が案内することもありました。
この保全した仮設集会所と仮設住宅は、多世代交流館になニ~ナに
活動の拠点として活用していただきました。
活動に必要な備品等も集会所に必要な展示資料として用意しました。
ここでの子育て世代の活躍を見て、スタッフと意見交換をできたことで
その後の活動に大きな影響を受けています。
【執筆】
福島県立博物館 主任学芸員 筑波匡介(第4話)(元中越メモリアル回廊担当職員)